カナダの永住権申請を考えている方は一度は聞いたことがあるIELTSとCELPIPという英語のテスト。どちらがいいのかという質問をよくいただくのでまとめてみました!
IELTS
International English Language Testing System(IELTS, アイエルツ)とは、英語検定の1つで、ケンブリッジ大学英語検定機構、ブリティッシュ・カウンシル、IDP Educationによって協同で運営されている。
IELTSには2種類のテストがあり、アカデミック・モジュール(Academic Module)は主にカナダ、US、オーストラリア、イギリスなどの大学やカレッジなどの高等教育機関への出願のためのテストとなっている。一方でジェネラル・トレーニング・モジュール(General Training Module)は一般的な生活、仕事や、移住関係に関わる内容となっており、主にカナダやオーストラリアでの永住権申請の目的で利用される事が多い。
IELTSの特徴は基本的に筆記試験+面談(スピーキング)。そしてベースがBritish Englishになっているので、カナダでしか生活をしたことが無い人にとってはリスニングが聞き取り辛いなどのデメリットがあるかも。その反面、歴史が長いためIELTSの本やサンプル問題などがたくさん出回っており、どんなテストか?のイメージがしやすい。
CELPIP
ブリティッシュコロンビア大学(UBC)にて作られた、カナダ英語の英語検定。ブリティッシュ英語のようにアクセントが無く、100%カナダ英語での発音なので、カナダで生活している人にとっては聞き取りやすいはず。
そしてIELTSと大きく異なるのが全4スキルとも完全コンピューターベース。そしてリスニングとリーディングに至っては4つの選択肢から答えを選ぶ選択式なのが嬉しい。実は他にも素敵なメリット多数!しかし歴史が浅いためCELPIPに関する教材やプログラムなどが殆ど世に出回っておらず、どんな試験なのかがまだまだ知られていないのが現状。
内容はIELTSのGeneralと同じように、一般生活やビジネスなどの内容。そして、カナダの歴史やカナダで生活していると聞いたことがあるような話題が出てくる事が多いため、普段からカナダ生活にどっぷり浸かっていると馴染みあるトピックがでてくるかもしれない。
テスト形式
Listening (30分)
4セクション
<Part 1>
日常会話や身の回りで起こりえるシチュエーション。
<Part 2>
日常的な内容。パート1の少し難易度UPバージョン
<Part 3>
アカデミックな内容。大学や研究についてのディスカッションやカンバセーションが多い。
<Part 4>
講義、スピーチの長文内容。アカデミックな内容でかなり複雑。
1から4に向けて難易度が高くなる。
聞き取りながら単語を書き取っていく必要があるため、聞き逃すと致命的!
そしてスペルも重要なので単語は聞き取れてもスペルが間違っていると容赦なく×にされてしまうので要注意。
リスニングを終えた後、10分間回答用紙に答えを書く時間が設けられている。
計40問
Reading (60分)
3セクション
パート1から3に向けて段々難しくなると言われているが、最近ではパート1が一番難しかったという声を聞くこともある。
なにしろ長文のパラグラフが各パートにあって、全部をしっかり読み込む時間なんて自分のような凡人には到底無理!スキャン(読み取り)スキルなどを培うべし。
リスニング同様、書き取りなのでスペルミスや大文字小文字などのケアレスミスに要注意。
注)リスニングとは異なり、別途答えを清書する時間は設けられていないので、できれば50分以内に3セクションの回答を終え、最後の10分で見直す、などの時間配分も考えるように!
計40問
Writing (60分)
2セクション
<Part 1>
※最低150字以上
アカデミックの場合:グラフやプロセス図を参考に分析し、文章にまとめるレポート
ジェネラルの場合:家族、友人に宛てた手紙や、ビジネスシチュエーションでのレター
<Part 2>
※最低250字以上
アカデミック、ジェネラル共にお題に合わせたエッセイを書く。
ジェネラルはアカデミックに比べ一般的なトピックである事が多い。
Speaking (11-14分)
IELTSは試験管と1対1の面談式。3セクション。
<Part 1>
名前を聞かれたり、どんな家に住んでいるのか、好きなアーティストは誰かなど日常会話から始まる。
<Part 2>
キューカード(質問が書かれた紙)とメモを渡され、1分半ぐらいの猶予がもらえるのでその間に話すことを考える。メモに話したいことを書きだしてもOK。面接間がストップと言うまで話し続けること(大体1分半前後)。途中で止められてもスコアには響きません。むしろ話すことがなくなってストップと言われる前に話し終えて沈黙してしまうと減点になることも。
<Part 3>
パート2の内容に関連した内容の質問となる。
パート2で「あなたの町にあるカンパニー(会社・企業)について話して下さい」という内容であなたがどこかの企業について話をしたとすると、パート3ではその会社で働きたいですか?と聞かれたり、少し確度を変えた抽象的な質問がされる。例えば、「青少年の就職率を確保するため、政府は大学の学費まで無料にすべきだと思う?あなたならどんな政策が良いと思う?」というような内容に。
Listening (47-55分)
6セクションでの構成。基本的に最初に1~3分ほどの音声(またはビデオクリップ)を聞き、その後に質問が出てくるので4択から選ぶというもの。
- Problem Solving
日常のやりとり、例えばスーパーマーケットやヘアサロン、道案内等で問題を解決したい側とその対応をする側の会話。約1分~1分半ほどの短い会話を聞き、その後2,3問の質問が出される。それを×3回ほど繰り返す。 - Daily Conversations
こちらも日常会話。同僚や夫婦、ご近所同士など登場人物は大抵二人。1分半~2分前後の会話を聞いて質問に回答する。 - Information
上記二つよりも少し複雑な内容の2分半前後の音声を聞いた後に質問がいくつかでてくるので回答する。 - News Articles
1分半前後のニュースの記事に関する音声。聞き終わった後まとめて質問が出てくるのでプルダウンで選んで回答する。 - Group Discussions
ビデオクリップ。大抵3人の男女が会話している様子で2分前後の内容。ビデオが終わるとその後質問がまとめて出てくるのでプルダウンから各回答を選ぶ。 - Viewpoints
約3分ほどの少し長めの音声。スピーチや講演のように一人の人が出来事などを淡々と話すという内容。音声が終了後、まとめて質問が出てきてプルダウンで各回答を選ぶ。
このセクションでは全体の内容を把握しているかどうかが問われる。
Reading: (55-60分)
4セクションで構成されており、こちらもリスニング同様、基本的に4択の中から選ぶ内容となっている。
- Reading Correspondence
手紙やEmailの内容に対する質問への回答と、その手紙に対して整合性がとれた内容で返信するというもの。 - Reading to Apply a Diagram
新聞広告などに載っている習い事やデイケア施設、ビジネス広告、旅行プラン一覧などの記事があり、それに対する内容について整合性がとれるように文章の内容を完成させるというもの。 - Reading for Information
IELTSにもよく出てくるが、長文のパラグラフがA~Eに分けられており、それぞれが何について書かれているかをマッチングさせる問題。こちらに関しては4択ではなく実質5択(A~Eなので)から選ぶものになる。上記2つに比べて少し難しい内容。 - Reading for Viewpoints
突然難しい単語がでてきたりと難易度があがる。長めのリーディングパラグラフに対して、全体像を理解しているかどうかが問われる問題。こちらも4択。
Writing: (53分)
2セクションに分かれており、各項目がそれぞれ26分と27分となっている。
CELPIPのメリットはこのライティングにあると言っても良い。まず、IELTSで苦労する【文字数の確認】だが、こちらはワードカウント機能があるので数えなくても一目瞭然。そして、PCを使っての操作なので、あ、やっぱりこの文章をここに持ってきたいなと思ったときにカット&ペーストが出来るので編集が早い。そして最後に、ワードのようにスペルチェック機能がある!しかも右クリックすると近い候補がでてくるのも嬉しい。これに頼り切るのは良くないが、スペルに自信がない人には安心の機能かも。
<Part 1>
※150~200字以内
家族への手紙やビジネスシチュエーション、施設へのクレームや意見、要望等をメールで書くという内容。
<Part 2>
※150~200字以内
Survey(アンケート)への回答。AとBのオプションがあり、どちらが良いかを書くもの。例えば、【あなたの街で開発予定ですがAとBどちらが良いか?(A:スポーツ施設がある公園、B:ショッピングセンター)】など。
どちらを選んでも間違いはなく、書きやすい方を書けば良い。
Speaking: (15-20分)
全部で8セクションあり。各項目、それぞれ30秒~60秒で考える時間を与えられ、60秒~90秒の決められた時間内にマイクに向かって話す。
- Give Advice
- Personal Experience
- Describe a Scene
- Make a Prediction
- Compare & Persuade
- Difficult Situation
- Give an Opinion
- An Unusual Situation
※尚、CELPIPには問題作成用の研究目的のため、本番では採点はされない問題が混ざっている。どれが研究用かがわからないようになっているので必ず全てを全力で回答するように。
点数
CLBとはCanadian Language Benchmarkの略で、カナダ独自の英語力スコアのことです。
CLB | Listening | Readming | Writing | Speaking |
---|---|---|---|---|
10 | 8.5 | 8.0 | 7.5 | 7.5 |
9 | 8.0 | 7.0 | 7.0 | 7.0 |
8 | 7.5 | 6.5 | 6.5 | 6.5 |
7 | 6.0 | 6.0 | 6.0 | 6.0 |
6 | 5.5 | 5.0 | 5.5 | 5.5 |
5 | 5.0 | 4.5 | 5.0 | 5.0 |
4 | 4.5 | 3.5 | 4.0 | 4.0 |
CLB | Listening | Readming | Writing | Speaking |
---|---|---|---|---|
10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
9 | 9 | 9 | 9 | 9 |
8 | 8 | 8 | 8 | 8 |
7 | 7 | 7 | 7 | 7 |
6 | 6 | 6 | 6 | 6 |
5 | 5 | 5 | 5 | 5 |
4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
有効期限と受験するべき時期
IELTS・CELPIPどちらも有効期限は2年。
受験はカナダのカレッジ入学を目指す場合は、プログラムによっても前後するが、入学の1年前ぐらいには願書提出することが多いので出来ればそれくらいを目標に。
永住権申請を目指す場合も、申請予定の1年前から受験を開始がベスト。
1回目で点数を取れないこともよくあること。直前で慌てて勉強・・・しても簡単にスコアはあがってくれない(泣)突然永住権のルールが変わった!なんて事もあり得るので、早めに準備し、少しでも可能性があるうちにさっさと申請を目指しましょう。
開催頻度
原則月3回。基本的に土曜日の午前中で一部センターによっては平日に行われる事もある。IDP、British councilそれぞれのセンターによってスケジュールが異なるので、希望のセンターに開催日・空席を確認しよう。
IELTSテストロケーション&日程
センターによって異なるが、平日、土日を含め週に1~3回ほど行われていることが多い。時間も午前と午後があることも。こちらのページにローケーション及びスケジュール一覧があり確認が可能。
CELPIPテストロケーション&日程
CELPIPは1度受けると次に受けるまで30日以上あけなければならないので要注意。
目的別
General:主に永住権申請
Academic:カレッジ・大学進学・その他一部資格試験等の要項
- 永住権申請
- 移民コンサルタント資格
- Real-Estate Councilの資格試験要項等
値段
CAD $319(センターによっては若干異なる事あり)
CAD $280
対策 (教材・学校)
教材
ちまたの本屋にもたくさん教材があるが、すでに高いレベルの英語力でさらなる高みを目指している、という方以外は日本語解説がついた教材があるとわかりやすいのでおすすめ。あとはCambridgeが出版している過去問集(IELTS 8~12あたり)はIELTSの問題形式や出てくる単語などがわかるのでこちらも購入する価値あり。特にアカデミックの場合単語力がスコアを左右すると言っても良いので単語本(有名なのは旺文社の「実践IELTS英単語3500」)があってもいいかもしれない。
学校
バンクーバー・トロント共にIELTSプログラムを取り扱っている学校は多い。フルタイムだけではなく、午前や午後のみ、仕事をしている方の為の夜間や週末のプログラムなど豊富。
教材
CELPIP は情報・教材等の管理が厳しく、現時点では、基本的に公式ホームページで購入するのがベスト。ほぼ市場に出回っていない。公式サイトからの購入の場合、本が届くものと、オンライン上の教材(練習問題)などがある。練習問題などはずっと使えるわけではなく有効期限が3ヶ月なので要注意。
学校
一部の個人チューターを除いてはCELPIPのプログラムを開講している学校はほぼない。現在、バンクーバーだと3校ほど。ちなみにうち1校はオンラインでのライブ授業に参加が可能なため、時間がない方にもピッタリ。
中級以上のレベルがある方は英語でCELPIPの授業、そしてビギナーレベルの方は母国語でCELPIPを学べるのが特徴。
おすすめの会場
よくIDPとBritish councilどちらのセンターがいいですか?という議論になるが簡潔に回答すると「どちらでも基本同じ」。IDPやBritish council、Cambridgeが共同でテストを開発しているので大きな差はなく、そのときの問題の相性。それに限るかと。
ただし!できれば予約の際に是非とも参考にしてもらいたい点あり。それは・・・
ヘッドフォンがあるかどうか。そして、会場が大きな窓に面しているか、いないか。
ヘッドフォンはリスニング用であるのとないのとでは大違い。そして窓がある場合は外や周りの雑音が聞こえてくるので、できれば窓がなく外からの音が聞こえないようになっている会場がおすすめ。
CELPIPは全てがコンピューターベースのため、全てヘッドフォンつき。しかし、隣の受験者との距離も近い事もあり試験会場の作りによっては周りが気になって仕方ないという人もいるため、ものすごーーく神経質な人は向かないかもしれない。ネイティブの受験者はこっちがライティングを始めたぐらいにはもうスピーキングのセクションまで進んでいて、ライティングで集中できないということも。会場によってはヘッドフォンとは別に防音用のヘッドフォンが用意されていることがあるので、そのような会場を選ぶと良い。
あなたに合っているのはどっち?
パソコン操作が得意ならCELPIPは1度受けてみても良いかも知れない。特にIELTSでリスニングやリーディング、ライティングで伸び悩んでいるならCELPIPは試す価値あり。しかし、正しくスコアを伸ばすには傾向と対策を知る必要がある。特にスピーキングはしっかり対策していないとノンネイティブはスコアが伸びにくい。
そして、人との会話が慣れている人や、時間制限があると焦ってしまうという人の場合IELTSでは試験管との会話なのでIELTSの方を得意とする方も。しかし、リスニングにおいてはCLB8以上を目指す場合、スコアが7.5以上必要となり、CLB7のIELTSスコア6と比べて1.5もジャンプアップするため、ここで苦戦する人も多い。イギリス英語である事もカナダで生活する人にとっては伸び悩みの原因だろう。
人によって、得意不得意があるため一概には言えないが、
- 筆記派
- イギリス英語のリスニングでも気にならない
- コンピューターに向かってのスピーキングは苦手で人と話す方が良い
- あまり時間がないので何度か立て続けに受験したい
という方はIELTS
- パソコンになれている
- イギリス英語がどうしても苦手
- スペルミスが多い
- 人との会話は緊張して苦手
という方はCELPIP
が良いかも知れない。